景表法

「景表法」にまつわるコラム記事。20本掲載。

景表法·読了 8 分

ニセ牛缶、1962年 — 景品表示法が生まれた朝

1960年 8月、横浜のある主婦が缶詰を開けた。「牛肉大和煮」のラベル、中身は鯨肉だった。主婦連合会が調べると、20数社の缶詰のうち牛肉 100%は 2社だけ。詐欺罪は適用できなかった——肉が安かったから。食品衛生法も使えなかった——健康被害はなかったから。法律の谷間に落ちたこの缶詰が、2年後、日本に景品表示法を生んだ。

景表法·読了 8 分

特賞 1000万円、1961年 — 景表法「景品」が生まれた春

1961年 4月、ロッテはガム 50円分の包装紙を送ると 1000万円が当たる懸賞を始めた。応募は 760万通。当時の宝くじ最高額は 100万円、その 10倍だった。同じ頃ウイスキーには「ハワイ旅行」が付き、化粧品売場は懸賞会場と化した。ロッテは「打倒ハリス」を達成しガム業界 1位になった。その翌年、過大景品を禁じる法律が生まれた。

景表法·読了 10 分

みそ・しょうゆ・百貨店、1952年 — 景品規制が始まった3つの場所

1952年3月、公正取引委員会が出した一枚の告示が、戦後初の景品規制を始めた。対象は3つだけだった。台所の調味料 (みそ・しょうゆ) と、街の華 (百貨店)。なぜこの3業種が選ばれ、それ以外は対象外だったのか。背後には戦後物資不足の景品競争、108万店の中小小売、ドイツ1932年の禁止令の影、そして10年後の景表法へつながる長い助走があった。

景表法·読了 13 分

おまけ禁止令、1932年 — ドイツが70年動かなかった理由、2001年に動いた理由

1932年3月、ワイマール共和国末期のベルリンで「経済保護のための緊急令」が出された。その一節に、小売店が商品におまけを付けることをほぼ全面禁止する条項が含まれていた。ナチス期、戦後西ドイツ、東西統一を経て、この景品禁止令は70年近く生き続けた。動かしたのは内側の力ではなく、EUの e-commerce 指令という外圧だった。隣の米国はそもそも景品禁止を持たず、別の法体系で同じ問題に向き合った。日本の景表法はこの両端の中間に座っている。

景表法·読了 9 分

不動産、1963年 — 公正競争規約という発明

1962年に景表法が成立した翌年、最初に認定された業界自主規制は不動産の表示規約だった。当時の住宅地価は 13年で約 9.6倍、半年で 50%上昇する時期もあった。住宅難の中で誇大広告とおとり広告が横行していた。なぜ不動産が選ばれたか、なぜ業界自主規制を法律にビルトインしたか、現在 103本まで増えた半世紀を辿る。

景表法·読了 12 分

自主規制とカルテル — 業界の取り決めを分ける 4つの境目

2022年度、公正取引委員会がカルテルに命じた課徴金は総額 1,019億 8,000万円 ── 1977年以降の過去最高だった。同じ時期、景表法に基づく公正競争規約は 103本が合法に運用されている。

景表法·読了 14 分

消費者庁、2009年 — 福田康夫の宿願と食品偽装ラッシュ

2008年 1月 18日、福田康夫は施政方針演説で「強い権限を持つ新組織」を発足させると宣言した。1年前から続いていた食品偽装の連鎖、不二家・ミートホープ・赤福・船場吉兆・比内地鶏 ── そして翌週には中国産毒餃子事件が起きる。

景表法·読了 12 分

スカスカおせち、2011年 — 景表法と SNS が出会った 47日

2010年 12月 31日、横浜のバードカフェがグルーポンで売った定価 2万 1,000円のおせち 500セットが、元日の食卓で「中身スカスカ」の状態で開かれた。写真は 2ちゃんねるに投稿され、Twitter で爆発的に拡散。配達 92件分の苦情、未配達 200件。

景表法·読了 15 分

ペニーオークション、2012年 — ステマ規制 11年沈黙の発端

2010年 12月、8人のタレントのブログに同じ文面のペニーオークション宣伝が並んだ。ほしのあき 30万円、綾部祐二 5万円、小森純 40万円 ── 報酬を受け取って書いた「本当に落札した」は嘘だった。

景表法·読了 18 分

FTC、1914年 — 推薦広告ガイドへの 110年

1914年 9月 26日、ウッドロウ・ウィルソンが Federal Trade Commission Act に署名し、米国に独立規制機関 FTC が生まれた。当初の役割は反トラスト ── 巨大企業の不公正な競争方法を取り締まることだった。

景表法·読了 14 分

課徴金、2014年 — 景表法 52年目の制裁

2013年 10月 7日、阪急阪神ホテルズが「芝エビ」と称してバナメイエビを 7年半提供していたと発表した。47品目、約 79,000人。続いて高島屋、近鉄、リッツカールトン大阪 ── ホテルと百貨店の高級レストランで偽装の連鎖が起きた。

景表法·読了 14 分

打消し表示、2017年 — 視線は止まらなかった

2017年 7月 14日、消費者庁が「打消し表示に関する実態調査報告書」を公表した。動画広告のうち、強調表示と打消し表示が同時表示されるのは 72.0%、文字サイズは強調表示の 20-30%未満が高割合、呈示時間は 2秒以下が高割合 ── 「効果には個人差があります」「※税抜・繁忙期除く」が実際には消費者に届いていない実態が、初めて公式に数値化された。

景表法·読了 12 分

ブレインハーツ、2018年 — アフィリエイトサイトの表示が景表法と出会った日

2018年 6月 15日、消費者庁は株式会社ブレインハーツに対する措置命令と課徴金 2,229万円の納付命令を出した。対象は 5商品 ── グリーンシェイパー、アストロンα、スリムイヴ、恋白美スキンソープ、Smart Leg。「7日間飲むと 1ヶ月体重が減少し続ける」「洗うだけで美肌を生成」など根拠のない効能表示と、販売実績のない通常価格による二重価格表示。

景表法·読了 12 分

動画見放題、2019年 — 留意点 8ヶ月後の試金石

2019年 2月 22日、消費者庁は株式会社TSUTAYA に課徴金 1億 1,753万円の納付命令を出した。「動画見放題」と表示されていた 3つのプラン ── 実際の見放題対象は配信動画の 12〜27%、新作 ・ 準新作は 1〜9%にすぎなかった。

景表法·読了 15 分

ステマ規制、2023年 — 11年沈黙の到達点

2023年 10月 1日、景表法 5条 3号に新しい指定告示 (令和 5年内閣府告示第 19号) が施行された。「事業者が自己の供給する商品又は役務の取引について行う表示であって、一般消費者が当該表示であることを判別することが困難であると認められるもの」── 日本のステマ規制が、ようやく形を持った日だった。

景表法·読了 10 分

景表法改正、2024年 — アメとムチを同時に入れた 62年目

2024年 10月 1日、改正景品表示法 (令和 5年法律第 29号) が施行された。3つの新しい仕組みが同時に入った ── 事業者が自主改善計画を出せば処分を回避できる「確約手続」(アメ)、措置命令を経ずに直接 100万円以下の罰金を科せる「直罰規定」(ムチ)、過去 10年以内に課徴金を受けた事業者の率を 3%から 4.5%に上げる「1.5倍加算」(再犯へのムチ)。

景表法·読了 9 分

景表法が届かない広告 ── なりすまし、AI レビュー、そして規制の振り子(2024–2026)

画面の中で、前澤友作が投資をすすめていた。声も、顔も、本人にしか見えない。だが彼は、その言葉を一度も口にしていない。AI が合成した「実在しない本人」だった。

景表法·読了 7 分

16億5,594万円 ── 課徴金の10年、牙は巨大化した(2016–2025)

2024年5月28日、消費者庁は中国電力に16億5,594万円の課徴金を命じた。景品表示法の課徴金として、過去最高額。電気料金プランを「安い」と見せた表示が、燃料費調整で必ずしも安くなかった ── 派手な嘘のない「比べ方」の不当表示に、16億円の値札がついた。

景表法·読了 7 分

おまけから AI まで ── 景表法90年の地図(1932–2026)

1932年のベルリンで禁じられた「おまけ」と、2024年の東京で16億円を課された「料金の見せ方」は、同じ一本の線の上にある。

景表法·読了 6 分

優良誤認・有利誤認・ステマ ── 景表法の不当表示、3つの入口と、その外側

2024年、消費者庁が裁いた広告のうち、中国電力は「価格の見せ方」で、メルセデスは「標準装備という品質の見せ方」で、chocoZAP は「広告だと分からせなかったこと」で罰せられた。同じ景表法でも、当たった条文は三つに分かれる。